Researcher4
政策研究事業本部 大阪本部
研究開発第2部(大阪) 主任研究員
沼田 壮人
地域振興や自治体政策の
立案を多角的に支援。
メンバーを育成し、チーム
として高い成果をめざす。
経歴
2003年入社。京都大学大学院経済学研究科修了。学生時代は財政学・環境経済学のゼミに所属し持続可能な発展を都市政策に活かす方策について研究。また国際交流のサークルに入り、多国籍の学生仲間と国内外をともに旅した。
私の信念
「お役所仕事」等という言葉もあるように何かと批判を受けることも多い行政ですが、どんな役所にも必ず真面目で誠実で熱意ある職員の方がいます。そうした職員の方々の想いを受け止め、その理想の実現のための力になりたいと考えています。彼らとともに仕事をすることで知見や経験を深めながら、そこで得たものを次のプロジェクトに活かしていく。そうした積み重ねによって、今後も地域の発展に尽力していきます。
私の仕事
研究開発第2部(大阪)では、国や地方自治体等の官公庁のお客さまに対し、環境・経済・産業、観光、文化・芸術等をはじめとする幅広い分野で、地域の持続可能な発展につながる調査や提言、また、それを受けての政策立案や事業推進の支援を行っています。私自身も入社以来一貫して地域×持続可能性を自らのテーマに据えて活動してきました。
近年取り組んだプロジェクトのひとつに「環境と観光の両立のための持続可能な観光客受入手法に関する調査」(クライアント:国土交通省)があります。日本を訪れる外国人観光客は急激に増加しており、大都市だけでなく、地方を訪れる方も増え、観光は地域の発展を担う重要な産業になりつつあります。一方で、交通渋滞による排気ガスの増加、ゴミの増加等による自然環境・生態系への悪影響、公共交通や道路の混雑といった事態が発生し、観光価値の低下や生活環境の悪化といった問題が懸念されています。
プロジェクトでは、このような状況を踏まえ、「観光資源の価値」および「住民の生活環境」の両方が維持向上させられるような、持続可能な観光客の受け入れの実現に向けた国内外における取組事例の調査と、今後の方策についての検討を行いました。
調査で訪れたオランダのアムステルダムでは、観光客の急増に伴って発生したさまざまな問題に対し、「City in Balance」というコンセプトを掲げ、観光と市民生活の調和を図るべく、特定エリアでのホテルの建設制限や、人気観光施設の事前予約制の導入といった措置を進めています。また、観光客の増加に伴う課題は、混雑に伴う交通問題、ゴミの問題、民泊に関連する住宅問題等、行政的にはさまざまな部署が関係しているため、アムステルダムの市役所では「City in Balance」を実現する特任チームを設け、部署横断的に対策に当たっていることが明らかになりました。
私はプロジェクトリーダーとして、このような国内外の状況に触れながら、日本の地域にどのように役立てたら良いか、クライアントと相談や議論を重ねながら成果をまとめ上げていきました。一方で、定められた契約納期と金額の中で、国内外の調査の調整からレポートの執筆までを完結させる、スケジュールや経費の管理も私の重要な仕事です。大変な部分もありますが、とてもやりがいのある仕事だと思っています。
手がけたプロジェクトの一部
「(仮称)大阪から『いのち輝く未来社会』を
めざすビジョン」策定に係る調査検討業務
(大阪府)
幸福度指標策定支援業務及び
第5次総合計画改訂支援業務
(大阪府門真市)
環境と観光の両立のための
持続可能な観光客受入手法に関する調査
(国土交通省)
東京圏からの若者の人口還流の
促進に向けた調査業務
(神戸市)
私の
とっておき
「門真市幸福度指標について」のレポートです。幸福度指標は、研究者や国際機関のレベルでは議論が進んでいますが、市役所、区役所等の基礎自治体レベルでは、まだ日本でも検討している例が少ないテーマです。門真市でのこの仕事は、基礎自治体レベルであっても、指標検討の背景となる理論は研究レベルと遜色ない水準を維持しつつ、市民や市の職員にとってなじみやすい内容になるよう工夫を重ねました。クライアントである門真市の市長や市職員の本テーマへの関心が高く、大学院生時代から一緒に研究してきた先生方に委員に加わっていただき作り上げたこともあり、私にとって印象深いプロジェクトとなりました。
仕事の醍醐味
仕事を通じて新しい世界が広がることです。訪問する場所、担当するテーマ、クライアント、インタビュー先の研究者、企業経営者、エンジニア、社会起業家等、この仕事を通じて本当にさまざまな場所や人、そして知見に触れることができました。これまで見ていた自分の世界がいかに狭かったかを知りました。仕事で扱う社会課題には、なかなか出口が見えない困難なものもありますが、それらに真摯に取り組む人々の存在を知り、また一緒に仕事をしたりすることで、「世の中捨てたものじゃない」と前向きな気持ちになれることも魅力です。
5年後の私
少子化による人口減少や高齢化の時代を迎え、地域社会はかつてないほどのさまざまな課題を抱えています。一方で地方創生の動きやコロナ禍の中で、大都市に毎日満員電車で通勤するという働き方・暮らし方を見直す動き等、新たな潮流も生まれています。今後も地方の行政マネジメントや地域活性化の分野で専門性を深めていきたいと考えていますが、さまざまなプロジェクトや情報発信、勉強会の企画等を通じて、出身地であり業務フィールドでもある関西の多くの自治体から頼りにされながら、熱心な職員の方々のネットワークづくりにも貢献できたらと思っています。
心に残るエピソード
入社2年目に、薬物依存症の人の社会復帰支援を行うNPOへのインタビューを行いました。報告書にインタビュー内容を掲載するにあたり、「罰するよりも息の長い治療と支援が重要」というメッセージを中心にレポートをまとめたところ「こちらの伝えたかったことをよく理解してもらい大変嬉しい」との返信をいただきました。2年目で任される仕事が一気に増えてくる一方で、仕事をこなす能力がなかなか上がらないと感じて悩んでいた頃でしたので、とても自信を得た出来事となりました。