テーマから見るMURCの最前線
都市・地域開発(宇宙産業)


未来を照らす新たな産業を地域から

コンサルティング事業本部
社会共創ビジネスユニット イノベーション&インキュベーション部
2023年入社/商学部 卒業
宇宙産業を軸に地域振興に向けた戦略策定や実行支援に従事し、現在はカーボンニュートラルをはじめとした新産業×地域振興をテーマにコンサルティングを実施。
Q1 背景や課題は?
ロケット打ち上げと地域振興の意外な関係
近年、世界各地でロケットの打ち上げが活発化しており、2024年には254回の打ち上げが行われました。
ロケット発射場である宇宙港(スペースポート)が存在する地域では、ロケット打ち上げを起点とした人流の創出等、まちづくりの発展が見られます。また、ロケットや人工衛星といった宇宙産業を活かし、地元の学生に対するSTEAM教育(*)の推進も盛んに行われています。
一方、宇宙港がない地域では、主に製造業への波及効果が大きく、特にものづくり企業が集積する自治体では、地場産業の活性化に向けた新たな切り口として期待が高まっています。
ただし、宇宙関連部品は地上で扱われる部品とは異なり、より高い精密性が求められるため、開発期間が長期化しやすく、マネタイズまでに時間がかかることから、企業には一定の体力が求められます。
そのため、地域の事業者が宇宙産業へ参入するには、技術実証や製品開発に対する補助金の活用が不可欠です。こうした背景から、開発・実証から事業化に至るまでの期間において、官がブリッジの役割を果たすことが重要といえます。
科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Arts)、数学(Mathematics)の5つの分野を統合的に学習する教育アプローチ。従来のSTEM教育に芸術(Arts)を加えることで、より創造性や問題解決能力を育成することを目指す。
Q2 アプローチの方法は?
地域における宇宙産業の魅力と
可能性を探索
自治体が宇宙関連予算を獲得するためには、「宇宙産業の地域における魅力」と「自治体における宇宙産業のポテンシャル」の両方を示すことが重要です。
前者については、北海道、和歌山県、大分県において、ロケット打ち上げに伴う経済波及効果を算定しました。具体的には、直接効果・間接効果のそれぞれを分析し、ロケット打ち上げが地域経済に与える影響を可視化。経済波及の実態を明らかにしました。
後者については、鹿児島県において、地場企業の参入ポテンシャルと、宇宙ビジネスにおける県外企業の誘致ポテンシャルの2点を調査しました。地場企業の参入については、県内事業者の参入状況や関心度、参入に向けた課題の洗い出しを目的に、県内実態調査を実施。県外企業の誘致に関しては、企業が自治体に求める条件や誘致の実現可能性を検討しました。
これらを通じて、自治体における宇宙産業振興の方向性を明確化し、政策形成を支援しています。

Q3 乗り越えるべき壁は?
“つなぐ力”の存在が地域と宇宙を近づける
自治体の宇宙産業ポテンシャルに関しては、県外企業の誘致において課題があります。というのも、県外企業が立地先に求める要件のなかには、自治体の取り組みだけでは満たすことが難しいものも多く、誘致に適した自治体は限定的です。
一方で、地場企業の参入については、比較的どの自治体においても推進が可能とされています。課題としては、地場企業が宇宙産業への参入機会を獲得しづらいことが挙げられます。宇宙関連部品は、地上の部品と比べてはるかに高い精密性が求められるため、実績のない企業が単独で参入機会を創出するのは容易ではありません。
そこで重要となるのが、宇宙関連企業と地場企業をつなぐ「媒介者」の存在です。媒介者は、宇宙関連企業の製品ニーズと地場企業の技術シーズを双方理解したうえで、適切なマッチングを担う役割を果たします。
今後、自治体が地場企業の参入を促進していくためには、この媒介者の探索・活用を進めることが重要です。こうした媒介機能の強化によって、地場企業の活性化を通じた宇宙産業振興、ひいては地域経済の活性化が期待されます。
Q4 どんな未来を思い描く?
宇宙産業を起点に広がる持続可能なまちの姿
私が思い描く未来は、宇宙港(スペースポート)を中心に人の流れと経済が生まれ、宇宙産業が地域に根づくことで持続可能な発展が実現している姿です。
ロケット打ち上げが定期的に行われる地域では、宇宙港が観光資源として活用され、イベントや関連施設の整備を通じて地域外から多くの人が訪れ、経済波及効果が生まれることが期待されます。
さらに、宇宙関連技術やSTEAM教育の推進により、次世代を担う地元の若者が育成され、地域産業の高度化にもつながっていくと考えています。
また、地場企業が宇宙産業に参入することで、新たな「稼ぐ力」が生まれ、これまでにないビジネスモデルが構築されることも理想とする未来のひとつです。
こうした取り組みを重ねることで、宇宙産業を起点とした地域経済の活性化が進み、最終的には日本全体の競争力強化にも貢献できる未来を描いています。
Frontier Index

成長戦略・新規事業戦略

人的資本経営

業務改革・DX

気候変動

都市・地域開発

EBPM・政策評価

新技術の社会実装

地域包括ケア・介護

子ども・子育て
