食品ロス削減プロジェクト

生活者の行動を変え、より良き未来へバトンをつなぐ
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下、MURC)は、環境省による食品ロス削減に関する事業を継続して受託。全国の市区町村を対象とした調査や、モデル事業の伴走支援等を通じて、家庭系食品ロスの削減に取り組んでいる。一朝一夕では解決しない社会課題に対し、シンクタンクとしてどのような価値を提供しているのだろうか。
Toshiya Kayama
加山 俊也
政策研究事業本部 持続社会部
上席主任研究員/2001年入社/農学生命科学研究科 修了
環境政策を中心に、政策立案支援や調査研究などに従事。チームリーダーとして約10名のメンバーを牽引する。
Saki Nishimoto
西本 早希
政策研究事業本部 持続社会部
研究員/2024年入社/農学研究科 修了
学生時代から食品ロス問題に関心を持ちMURCに入社。1年目から加山のチームに所属し、調査や資料作成、支援事業等に携わる。
サーキュラーエコノミー・循環型社会の実現に向けて中央省庁を支援
サーキュラーエコノミー・循環型社会の構築は、いまや世界的な潮流となっている。資源の消費や廃棄のあり方を見直し、社会全体で持続可能な未来をめざす取り組みが加速するなか、特に注目を集めている課題のひとつが「食品ロス」だ。
食品ロスは、「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲット12.3において、2030年までに小売・消費段階での世界全体の一人当たり食品廃棄を半減するとともに、生産・サプライチェーンにおける食品損失を削減することが目標とされている。
MURCのシンクタンク部門は、以前より循環型社会の実現に向けた政府の取り組みに携わっており、10年以上前より食品ロス削減に関する事業を継続受託している。その当初から関わってきた研究員のひとりが、持続社会部でグループ長を務める加山だ。
“食品廃棄物については、食品リサイクル法(2001年)に基づくリサイクル推進とともに、2019年には食品ロス削減推進法(食品ロスの削減の推進に関する法律)が施行され、発生抑制(食品ロス削減)とリサイクル推進(肥飼料化、メタン化など)の両輪から取り組みが進められています。こうした政策上の方針を受け、MURCでは各種調査や支援事業等に携わってきました”
現在、日本における食品ロスの発生量は年間約461万トン(2024年度)に及ぶ。ここ10年で発生量は約200万トン減少したが、依然として深刻な状況に変わりはない。2024年に入社した西本は、学生時代からこうした状況に危機感を抱いていた。
“小学生のときに、日本の食品ロス年間発生量は、WFP(国連世界食糧計画)の年間食料支援量を上回ると知り、この問題に関心を抱くようになりました。大学進学後は、学生団体でSDGsや食品ロス削減の啓発活動に携わっていました”
食品ロス削減は解決すべき社会問題であり、大学卒業後も引き続き向き合いたい。そう考えた西本が就職先に選んだのはMURCだった。入社後は加山のチームに配属され、約10名のメンバーで中央省庁から受託した事業に取り組む。2025年度には、環境省から受託した食品ロス削減に関する3つの事業に取り組むこととなった。
家庭系食品ロスの削減に
多方面から取り組む
食品ロス削減は複数の省庁が連携して取り組んでいるが、MURCが継続して受託している事業のひとつが、環境省が実施する「家庭系」の食品ロス削減、地方自治体支援を中心とした事業である。
“各事業に複数の調査事項や支援業務が定められており、その内容は多岐にわたります。法律や基本方針等を踏まえたうえで、我々はそれぞれのタスクを進めていきます”
たとえば「モデル事業実施支援」では、環境省が公募した食品ロス削減や食品リサイクル推進等に関するモデル事業について、公募の審査支援をはじめ、採択されたモデル事業の伴走支援を行う。西本は複数の事業者と定期的にコミュニケーションを図り、モデル事業の進捗状況の把握や、効果測定の支援等を行った。
“例えば、家庭から排出される食品ロス削減を目的とした事業や地域の食品リサイクルを推進する事業等、モデル事業の内容はさまざまです。現状の課題は何か、どのような検証をすれば効果を測定できるのか等を話し合い、実証につなげていきました”
また、食品ロス削減の促進に関する調査・検討では、全国の市区町村を対象に食品ロス削減やリサイクルの取り組み等に関するアンケート調査を実施。その結果を踏まえ、家庭系食品廃棄物および食品ロス発生量の推計をまとめた。
“施策を執り行う中央省庁や、施策の担い手である事業者や自治体、そして生活者では、それぞれ食品ロス削減に対する認識や課題が異なります。誰がどのような課題を持ち、どのような施策を必要としていて、どのように実施するのが効果的なのか。政策が有効に機能するために、それぞれが置かれた立場を常に意識することを心がけました“
試行錯誤を繰り返し、
あるべき姿への道筋を照らす
多種多様なプレイヤーが存在する食品ロス削減事業。そのなかで特に西本が注力したのが、自治体職員向けの施策だった。食品ロス削減を担当する自治体職員が、施策を検討するうえで参考となる事例集や手引きを作成。その他、自治体職員向けの研修会開催を支援した。
“自治体にも規模の大小があり、施策に充てられる人員やコストは異なります。自治体のリソースに見合わない事例は、理想論で終わってしまうこともあります。学生時代は生活者視点で食品ロスの問題を捉えていたため、プロジェクトに参画した当初は国や自治体の視点から必要な施策を理解することが難しく、検討に時間がかかりました”
壁を乗り越えるため、西本は「とにかく周囲の意見に耳を傾けた」と話す。自治体職員や有識者へヒアリングを重ねたほか、上長や先輩からも情報を集め、事例集や手引きを練り上げていった。さらに環境省の「食品ロスポータルサイト」の保守・運営等、多岐にわたる施策を同時に進めていく。西本は当時入社2年目だったが、加山は「MURCには若手に仕事を任せる社風がある」と話す。
“メンバーには、入社1年目から「一人前の研究員」として責任のある仕事を任せています。クライアントとの打合せに同席してもらいますし、必要に応じて説明も任せていますね。もちろん、事前の準備は一緒にやりますし、フォローやコミュニケーションは欠かさないようにしています”
加山は「食品ロス削減事業においても、関係各所との丁寧なコミュニケーションが重要」だと語る。特に家庭系の食品ロスは、生活者一人ひとりの行動変容が解決の鍵となる。そのため、机上での調査や研究のみならず、実際に足を運んで現状を把握し、現場からの意見を吸い上げることも重視しているという。
“最終的に目指すべき社会像が明確である一方で、そこに至る道筋に明確な答えはありません。上流から下流まで密に連携を図り、培ってきた専門性を発揮しながら、仮説検証などの試行錯誤を繰り返してゴールに近づいていく。それこそが私たちの存在意義であり、シンクタンクで働く醍醐味であると考えています”
受け継いだバトンを、
より良い未来につなぐために
加山のチームは、2026年度も引き続き環境省の事業を受託し、食品ロス削減の課題に継続して取り組んでいる。社会課題は一朝一夕では解決しない。時間をかけ、粘り強く取り組むことが重要だ。学生時代の西本は、その歴史を既に目にしていたという。
“過去の報告書から、私が学生時代に参照していた資料や参画していたモデル事業、参加したイベントに加山さんたちが関わっていたことを知りました。MURCの取り組みが、当時の私にも届いていたことに驚きましたし、そのチームに今こうして自分が加わっていることに感慨深いものを感じます。私の仕事も、いずれ未来を担う誰かに届いたらと願っています”
現在、西本はサステナブルファッションのテーマにも携わっている。衣類の大量廃棄は世界的に大きな問題となっており、持続社会部でも数年前から取り組むべき社会課題として力を入れてきたという。
“政策の主体が国、自治体、事業者、生活者と多岐にわたる点、生活に密接に関わるテーマだからこそ生活者に対するアプローチが重要になる点等、廃棄物に関する社会課題には多くの共通点があります。食品ロス削減で得た経験を活かして、さらなる社会課題の解決に挑戦していきます”
“あるべき未来に対し、環境という側面から何ができるかを、私たちは常に考えています。食品ロス削減も、チーム内でのディスカッションを通じ、切り拓いてきたテーマのひとつです。今後も引き続き、シンクタンクという立場から、持続可能な社会に貢献できればと思います“
持続社会部が受け継いできたバトンは、少しずつ、しかし確かに社会を変えながら、より良い未来へと渡っていく。
Project Index

Project 01 Consultant Researcher
水素の社会実装プロジェクト
水素の社会実装を「地産地消モデル」で実現する。
コンサルタント × 研究員による共創プロジェクト

Project 02 Consultant
事業承継型M&Aプロジェクト
事業承継型M&Aで、企業の未来に新たな価値を。
経営者の「心」に寄り添うコンサルティングの形

Project 03 Researcher
食品ロス削減プロジェクト
家庭系食品ロスの削減は、持続可能な社会実現への鍵。
生活者の行動を変え、より良き未来へバトンをつなぐ





