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三菱UFJリサーチ&コンサルティング
Project

事業承継型M&Aプロジェクト

事業承継型M&Aで、企業の未来に新たな価値を。
経営者の「心」に寄り添うコンサルティングの形

三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下、MURC)では、M&Aアドバイザリー業務としてさまざまな案件に携わっている。そのひとつが事業承継型のM&Aだ。企業の後継者不足が社会問題となるなか、第三者に事業を引き継ぐ決断をした企業およびオーナー経営者に、MURCはどのように向き合っているのか。あるプロジェクトに焦点を当てた。

Member
Consultant
Erika Sejima

瀬島 江里加

コンサルティング事業本部 経営戦略ビジネスユニット コーポレートアドバイザリー部
マネージャー/2019年入社/商学部 卒

入社以来、M&Aアドバイザリー業務に従事。本プロジェクトでは案件開始後にプロジェクトに入りプロジェクトリーダーを務める。案件全体の進捗管理や関係者との折衝、メンバーの育成等を担う。

Yuna Nishimura

西村 優奈

コンサルティング事業本部 経営戦略ビジネスユニット コーポレートアドバイザリー部
コンサルタント/2022年入社/経済学部 卒

入社以来、M&Aアドバイザリー業務に従事。本プロジェクトの案件開始当初よりサブプロジェクトリーダーとして、外部との窓口や各種実務対応を幅広く担当。

Chapter 01

後継者問題を解決する
事業承継型M&A

経営者の高齢化が進むなか、事業承継に課題を抱える企業が増えている。親族や従業員に後継者が見つからず、やむなく廃業を決断する企業も少なくない。そのような中で注目されているのが、M&Aによる第三者への事業承継だ。

MURCのコーポレートアドバイザリー部に、三菱UFJ銀行から事業承継にまつわる今回のM&A案件が持ち込まれたのは、2024年のことだった。ある経営者(以下、クライアント)が、自社(以下、対象会社)の株式を売却したい意向を示しているという。

“業績は安定しており、当面は現体制で経営を続けることも可能でしたが、中長期的には後継者不在や市場縮小への懸念がありました。そこで、より良い条件で第三者に対象会社を承継し、さらなる成長につなげるためには今が最良のタイミングだと判断され、売却に向けた検討を開始されました”

西村は三菱UFJ銀行と連携し、売却先の候補となる企業を10社強リストアップした。近しい業種への売却を前提としたリストだったが、条件が折り合わない等の理由で交渉は難航。再び候補先を探すなかで浮上したのは、全くの異業種の企業だった。

“三菱UFJ銀行では普段からM&Aのニーズを吸い上げており、異業種ながら対象会社のスペックが希望と合致したのです。今後立ち上げる予定の新規事業に、対象会社が持つケイパビリティがどうしても必要とのことで、「欠けていたピースが見つかった」と非常に強い熱意で打診に応じてくださいました”

MURCは関心を示した買い手候補に対して、対象会社の情報を限定的に開示し、一次入札を実施。2025年に、買い手候補からM&Aの提案書を受け取る。通常、提案書に記載された主要条件を確認し、満足のいく内容であれば、その中でベストな交渉相手を選定して次のステップに進む。今回提案された条件には、クライアントの希望が強く反映されていた。買い手の強い意欲を感じさせる、いわゆる好条件といえるものであったため、案件はそのまま次の段階に移行すると思われた。ところが、予期せぬ論点が浮上した。

Chapter 02

経営者の不安を解消するために
何ができるか

一次入札の提案受領後、クライアントにはこのまま次のステップに進むことにためらいが見られた。買い手候補が異業種ということもあり、「本当に我が社との提携に意味があるのか」「従業員は納得するだろうか」と不安を抱いていたという。リーダーを務める瀬島は、プロジェクトメンバーとともに時間をかけてその不安に向き合っていった。

“M&A案件では、私たちアドバイザーが売り手と買い手の間に入り、交渉や手続きを進めるのが一般的です。ただ、今回のような不安を解消するには、両者が直接会話をする機会を設けるべきだと考えました”

こうして両者面談の場が設けられ、買い手側によるプレゼンが行われた。クライアントも積極的に質問を投げかけ、面談は両者の握手で終わった。しかし、クライアントの不安は完全に払しょくされたわけではなかった。

“多くの経営者にとって、M&Aは一生に一度の大きな決断となります。慎重になるのも当然のことです。我々からは決断を急かさずに、クライアントの声にじっくり耳を傾け、不安や疑問をひとつずつ解消することを意識しました”

丁寧な対話を重ねた結果、数ヵ月後、クライアントは次のステップに進むことを決断。M&Aのプロセスは「デューディリジェンス(DD)」に移った。これは買い手側が対象会社の事業価値や収益性、潜在的リスク等を調査するものであり、対象会社は多岐にわたる書類提出や質問への回答等を求められる。買い手側からの質問事項は300項目近くにのぼった。

しかしこのとき、対象会社側ではM&A検討の事実を知るのはクライアントただひとりである。この段階では社内での情報開示に慎重であったこともあり、結果的にクライアントが単独でDDに対応しなければならなかった

“DDが滞れば買い手側での検討にも遅れが出てしまいます。そこで、MURCで買い手側の質問を整理し、わかる範囲で回答のたたき台を作ったり、優先順位を付けたりする等、クライアントの負荷を可能な限り減らすよう対応しました”

およそ2ヵ月かけてDDは完了。買い手側から正式なオファーがあり、大小さまざまな論点はあったものの契約交渉は比較的スムーズに進められた。あとはクライアントが署名をすれば、すべてが完了する。しかし、このタイミングで再び手が止まった。「本当に、この買い手に売却していいのだろうか……」という迷いが、最後の決断を思いとどまらせていたのである。

*デューディリジェンス(DD)…M&Aの際、対象となる企業や事業の価値とリスクを詳細に調査するプロセスのこと
Chapter 03

M&Aの成否を握る
「人と人との対話」

関係者にとっては、このタイミングでのブレーキは思わぬものだった。

“2ヵ月におよぶDDはクライアントにとっても困難で負担の少なくないものでした。ようやくそれを乗り越えた後でしたので、既に気持ちが固まっているものだと考えていました。買い手側にとっても少々意外に感じられる場面だったと思います”

買い手側にも新規事業立ち上げのスケジュールがある。ここで信頼を損なえば、M&A自体が白紙になりかねない。とはいえ、再びゼロから売却先を探しても、買い手候補が見つかる保証はない。瀬島たちはもう一度両者面談の場を設ける等して、クライアントの不安を解消していった。

“クライアントは、お父さまから引き継いだ対象会社に長年関わられていました。それだけに対象会社への思いは強く、従業員の反応も非常に気にされていました。そこで、このタイミングで対象会社の役員の方々にもM&Aの件を開示していただきました”

“対象会社を訪問する際は、クライアントに威圧感を与えることがないよう、また、社員の方々が異変を感じ不安になることがないよう、こちらの人数を絞って伺うようにしていました。そこで聞き出した本音を踏まえて、買い手側に事情を伝え、少し時間をいただくようお願いしました”

逡巡は数ヵ月続いた。瀬島は伝え方に注意を払いながら、クライアントに「買い手側のタイムリミットが近い」ことを説明する。じっと話を聞いていたクライアントは、「わかりました。それまでに決めます」と約束した。

そして、タイムリミットの日。瀬島たちは緊張の面持ちで対象会社に向かった。出迎えたクライアントから「腹を決めました」という言葉を聞き、ようやく肩の荷が下りたような気がしたという。

“M&Aのプロセスはある程度の流れが決まっており、DD等はスピーディーに効率良く着実に進めるスキルが求められます。一方で、最後は人と人との対話で物事が決まるのも事実です。思いを汲み取ったうえで発言のニュアンスを調整する等、相手に寄り添うコミュニケーションのスキルが磨かれる仕事だと感じています”

Chapter 04

三者にとって価値のある
M&Aを実現する

無事に株式譲渡契約書が締結され、M&Aの工程は最後の「クロージング」まで進んだ。書類の授受、ガバナンスの見直しなど数多くのタスクがあり、法的な手続きには弁護士とのやり取りも発生する。作業は西村が主体となり、各方面とスケジュールを調整しながら進められた。

2026年。遂にすべての工程が完了し、株式の譲渡が実行された。

“最終日には関係者が一堂に会し、クライアントからは「おかげで最後までたどり着きました」と感謝の言葉をいただきました。皆さん本当にやりきった顔をされていて、これまでしてきたことが報われた思いがしました”

三菱UFJ銀行がその強固なネットワークで買い手候補を発掘し、M&Aに関する高い専門性を持つMURCが一体となることで、売り手・買い手・対象会社の三者にとって価値のある案件を創出し、確実に進めていける強み。今後の日本社会で、この強みはさらに存在感を増していくはずだと二人は語る。

“後継者不足は、今後ますます深刻な社会課題となるでしょう。親族や従業員への承継だけでなく、「外部のパートナーへのM&A」という選択肢を通じて、事業継続や成長を実現するケースは増えていくと考えています。今回の案件はそのモデルケースとして、社会的にも意義があったプロジェクトだと受け止めています”

“プロジェクトリーダーとして経験が浅いなか、無事にクロージングまでプロジェクトを推進できたことは、大きな自信につながりました。若手メンバーにも主体的に案件を進める機会を用意でき、チームの成長を感じたプロジェクト期間でした。今回の経験を糧に、MURCの強みをさらに強化していければと思います”

売り手・買い手・対象会社の三者にとって価値のあるM&Aを実現することは、課題からスタートして新たな価値を生み出す取り組みとなる。日本経済の未来を見据え、コーポレートアドバイザリー部のメンバーたちは、日々経営者の言葉に耳を傾け続けている。

「共創する知」響き合う専門性で未来をつくる